職場討議資料「新時代に対応した県立工業高校の校名変更と学科改編」について

教文部は、2020年1月17日、職場討議資料”「新時代に対応した県立工業高校の校名変更と学科改編」について”、を職場に配布しました。
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以下、概要を紹介します。
Ⅰ、Ⅱは略
Ⅲ 現状で考えられる問題点は
(1)「Society5.0」「超スマート社会」「技術革新」などのワードをちりばめています。産業界の「要請」に応える「即戦力となる人材」の育成に傾きすぎていないでしょうか。高等学校教育は、「教育基本法」「学校教育法」にあるように「人格の完成」「幅広い知識と教養」「豊かな人間性」などを育む基礎的教育こそ求められるべきです。このことは、県も否定できないはずです。
2016年度に愛知総合工科高等学校が開校し、公設民営の専攻科も設置されました。まもなく4年が経過します。総合工科でめざしている新しい「工業高校像」を他校に広げる方向と見受けられます。
(2)2021年4月実施はあまりに拙速です。現在、各校では2022年実施の新学習指導要領に基づく新カリキュラム編成作業がすすめられています。該当校は、これを事実上1年前倒しして2021年入学生のカリキュラムも同時に考えていかなければなりません。中学生への案内などを考えれば、あと半年しかありません。
(3)改編と新設で獲得できる予算に違いがあってはなりません。ロボット工学は、「(電子機械科からの)改編」(瀬戸、春日井、起、佐織、半田、豊川)とされ、IT工学は、「新設」(名南、一宮、豊田、刈谷)、環境科学も、「新設」(小牧、起、岡崎、碧南)です。いずれにしても、かなりの規模の新規の予算付けが必要となるでしょう。現場の要求を早急にまとめ、それに基づいた予算を付けさせることが必要です。
(4)1学科を2学科に改編・新設する場合(電気→ITと電気、電子機械→ロボットと機械)は、喫緊の様々な課題が持ち上がるでしょう。まず現行スタッフで2学科両方のカリキュラムや実習、部屋割り、予算要望などを決めなければなりません。カリキュラム編成では、指導要領の工業科目が新学科に対応していないのなら、特徴ある学校設定科目を設けたり外部講師の選定も必要になるかもしれません。
(5)新たなコースとして、「生活コース」を8校に新設としたことが目新しいです。発表によると、「モノづくり企業で活躍している女性から直接指導を受けるととともに、全学年を通して生活に関連する科目を履修し、将来『モノづくり女子』として活躍できる人材、また男女共同参画の視点から、モノづくりをしながら、仕事と生活を両立できる人材を育成」とあります。男子ももちろん履修可能とのことですが、従来入学が少ない女子生徒獲得のための目玉ということでしょうか。県は、企業の女性を外部講師として招いたり、インターンシップの推進を想定しているようです。環境科学科での設定が多いですが、電子工学や情報デザインでも設置されます。生徒があまり知らない、女性が活躍する製造業の現場を知る機会になるでしょうか。
(6) 全学科一括募集や複数の学科での括り募集が大きく増えています。入学後のミスマッチの防止や、1年生で基礎的な学習にじっくりととりくめるメリットがあると考えられます。他方で、1年生後半の振り分けの指導について負担が増大します。
(7)瀬戸窯業高校の「総合ビジネス科」の募集停止の件は、大きな問題です。今年7月にも夜間定時制高校2校(旭丘、瑞陵)の募集停止が突然発表されました。今回も突然の発表でした。瀬戸地域の経済界からも心配が広がるのではないでしょうか。
愛知の商業教育が今後どうなっていくのか、明確なプランは県から示されてはいません。多くの商業科教員が不安や疑問をもっています。教員採用試験の「商業」が0になったことも不安に拍車をかけています。
代替措置として、「瀬戸北総合高校に商業系列を設置」と打ち出されました。現場では不安の声が広がっています。現行の7系列(人文、自然、福祉、生活科学、情報創造、健康科学、国際教養)は維持できるのでしょうか。現在の瀬戸北総合高校には商業科の教員はいません。こうした中で、カリキュラム原案を作れるのでしょうか。

Ⅳ まとめ
今回の提案は「魅力ある工業高校」へという打ち出しなのでしょうか。平成31年度入試での該当校(学科)の倍率をみると、低い場合、1.08、1.08、1.23、1.28、1.35、・・・という値が散見されます。県が「工業高校の生き残り」をかけて工科高校への改編を仕掛けたというように見えます。
ここまで大規模な「工科高等学校」への校名変更は全国初とのことですが、名前の掛け替えだけではなく、新たな学校づくりを探るきっかけとしたいものです。ただし、職場のとりくみなくしては、トップダウンによる「教育目標」おしつけになりかねません。大学進学数や、大企業への就職実績を今以上に競い合わされる契機になるおそれも十分にあります。
今年度は、2016年2月に発表された「県立高等学校教育推進実施計画(第1期)」の最終年度です。今回の発表は、これに合わせたとも考えられます。そこでも「キャリア教育」「ものづくり愛知」「スペシャリスト」といった言葉が多用されており、この方向は2020年2月にも出されるであろう「第2期計画」にも引き継がれることでしょう。
長時間過密労働の解消が叫ばれている今、一部の担当者に新設業務の負担が集中することがあってはなりません。職場の同僚性や風通しが今以上に大切になります。県への予算要求は引き続きすすめていきます。
工業高校はもちろんのこと、すべての職場で「県立高等学校教育推進実施計画(第1期」の検証と分析が改めて必要になっています。