「自分はかけがえのない存在」と思えること

愛高教情報 2023年4月12日発行 巻頭言

2月25日、瀬戸内海に架かる邑久長島大橋を渡りました。「ハンセン病と人権を考える」スタディツアーです。この橋は「人間回復の橋」とも呼ばれ35年前に完成しました。「人間としての尊厳」の回復を目指した国賠訴訟の勝訴から早22年。改めて国の隔離政策の誤りと人権の大切さを学ぶことができました。島内には新良田教室という定時制高校の分校があり、卒業生の証言に「教室で一番うれしかったことは、先生が相撲をとってくれたこと」とありました。先生が生身でぶつかったことがこれほどまでの印象となるのかと認識を変えさせられました。

人権尊重は学校の立脚地。制服のジェンダーレス、校則の公表など少しずつ広がっています。しかし肝心なのは一人ひとりの当事者意識。コロナ禍は社会に根深い差別意識を露わにしました。「最初の感染者になりたくない」という感情を持った人は少なくないかもしれません。「差別」「いじめ」をひとごととしないことが求められます。

昨年の児童生徒の自殺者数は過去最多の514人。私たち教職員は身近で見守り、小さな変化に気づいて声をかけることができます。そのためにも勤務条件の改善がまったなし。今こそ「先生増やせ」の一致点で世論を広げたい。

自分はかけがえのない存在で、未来には希望がある―。子どもたちにそう信じてもらうには、私たち自身が心からそう思える社会をつくること。今年も地道な歩みを進めたいと思います。

執行委員長  加藤 聡也