2024年 新年のご挨拶

新年のご挨拶

歴史の流れをとらえ、どんな社会を目指すか考えたい

愛知県高等学校教職員組合
執行委員長 加藤 聡也

 「お母さん、泣かないで」。ガザ南部のナセル病院で治療を受け右足を失った14歳の少年の言葉です。彼の父も弟も爆撃で殺されました。その彼が母には「泣かないで笑顔でいてほしい」と語るのです。万の単位の人命が失われています。ジェノサイド条約が固く禁じている集団殺害を許してはなりません。国連総会は12月12日に緊急特別会合を開き、エジプトが提出した「即時の人道的停戦」を求める決議を一五三カ国の賛成多数で採択しました。日本も賛成しました。この決議を力に即時停戦を実現しなければなりません。また、この悲劇はなぜ止められないのか。私たちに何ができるのか。生徒とも大いに語り合いたいものです。

NHKの朝ドラ「ブギウギ」では戦時下が描かれました。スズ子(趣里)が戦死した弟・六郎のために羽鳥善一(草彅剛)が作曲した「大空の弟」を熱唱する場面は引き込まれました。音声で聞いた時には伏字がそのまま歌詞になっていることが分からず、後日ユーチューブで字幕を見て改めて音楽を敵視した歴史を繰り返してはならないと痛感しました。

昨年の秋は、黒柳徹子さんの新著『続 窓ぎわのトットちゃん』も刊行されました。そこには食料難のひもじさ、兵士を万歳で送る出征の式で配られるスルメが欲しくて、式に参加したことへの深い後悔などが描かれました。22年12月の「徹子の部屋」でタレントのタモリさんが「23年は、新しい戦前になるのでは」と語ったことを思い出します。黒柳さんは「あっという間に戦争は始まる」「平和を守るためには、何を言っても自由である社会にしておかなければならない」(『文芸春秋』9月号)と警鐘を鳴らしてみえます。

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」。日本国憲法前文です。憲法を考えることは、戦前から戦後の歴史の流れをとらえること、そしてこれからどんな社会を目指すのかを考えることです。今年もよろしくお願いいたします。

(追記)元日、能登半島大地震が発生しました。被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

(愛高教情報 2024年1月17日付)