【暁鐘】 2021年2月24日

もうすぐ卒業式だ。今年度は卒業生の一人が出席できそうにない。外国に出自を持つ彼女は妊娠中で出産直前だ。無事出産したら、どこかの日程で彼女のための卒業式を開くことになるだろう。退学覚悟で妊娠を教えてくれた彼女に、やめる必要はないと伝えた時のほっとした顔を思い出す▼先日、卒業学年の1年次末に退学した生徒が訪ねてきた。彼女はしみじみと「一緒に卒業したかったなあ」とつぶやいた後、「でも学校をやめて良かった」と続けた。「やっぱり子育てしながら学校に通うのは無理って分かったから」と。彼女の退学理由も妊娠・出産だった。出産を決めた後、学校を続けるかやめるかを迷った時期があった。彼女は「勉強したいなあ」「学校に行きたいなあ」と繰り返し、「いつでも戻っておいで」と言うと笑顔で帰って行った▼二人の妊娠・出産は本人にとっては不本意だったもののように思える。しかし、彼女らにとってここは大切な場所だったのではないか。こことは定時制。彼女らの居場所をなくすことがあってはならない。(「愛高教情報」2021年2月24日)