職場討議資料「新時代に対応した県立工業高校の校名変更と学科改編」について

教文部は、2020年1月17日、職場討議資料”「新時代に対応した県立工業高校の校名変更と学科改編」について”、を職場に配布しました。以下、概要を紹介します。

愛知県教育委員会高等学校教育課は、11月25日、「新時代に対応した県立工業高校の校名変更と学科改編について」を記者発表しました。

Ⅰ 県文書の概要
今回発表された文書の概要は、以下の通りです。
県は、「グローバル化、デジタル化の進展に伴う産業界のニーズの変化を踏まえ、2021年4月より県立工業高等学校に新たな学科・コースを創設し、募集単位を見直し」としています。また、「この工業高等学校の再編により、工業教育の内容が大きく進化することを機に、新たな時代にふさわしい学校名に改称」としています。
校名変更は、工業高等学校等14校を「工科高等学校」に改称し、学科改編については、産業界のニーズの変化を踏まえ、現在の学科を見直し、「理工科」を1校、「IT工学科」を4校、「環境科学科」を4校、「生活コース」を8校に新設し、「ロボット工学科」を1校から7校に拡大するとしています。
学科名の変更は、「情報技術科」及び「情報システム科」を「情報デザイン科」に、「建築科」を「建築デザイン科」、「土木科」を「都市工学科」に科名変更するとしています。
また、中学生の進路ニーズを踏まえ、入学後に専門学科を選択できるよう、募集単位を大括り化となっている点が目立ちます。
最後に、実施時期は2021年4月(2021年度募集から)としています。校名変更については、愛知県立学校条例の改正案を2020年2月議会に提出し、審査となります。
また、学科・コースの新設・改編については、教育委員会会議(2020年6月開催予定)で正式に決定するとしています。募集人員は、「2021年度愛知県立高等学校生徒募集計画」での発表です。

Ⅱ 学校別の詳細

■総合工科高校
機械加工と応用化学を統合し、理工科を新設。

■名古屋工科高校(現:名南工業)
電気を分離し、IT工学(新設)と電気へ。

■瀬戸工科高校(現:瀬戸窯)
電子機械を分離し、ロボット工学(改編)と機械へ。工芸デザインのみ単科募集
総合ビジネス科は、募集停止。 →瀬戸北総合高校に商業系列を設置

■春日井工科高校(現:春日井工)
電子機械を改編し、ロボット工学に。
電子工学にコースを新設し、電子工学(生活コース)を新設。

■小牧工科高校(現:小牧工)
情報技術を、情報デザインへ科名変更。
化学工業をあらため、環境科学(生活コース)を新設。
機械、航空、自動車、電気で括り募集。
情報と環境で括り募集。

■一宮工科高校(現:一宮工)
電気を分離し、IT工学(新設)と電気に。
建築を建築デザイン、土木を都市工学に科名変更
機械、IT、電気で括り募集。

■一宮起工科高校(現:起工)
電子機械を改編し、ロボット工学に。
化学工業をあらため、環境科学(生活コース)を新設。
ロボ、機械、電子で括り募集。環境、デザで括り募集。

■愛西工科高校(現:佐織工)
電子機械を改編し、ロボット工学に。
建築を建築デザインに科名変更
ロボ、機械、電子で括り募集。

■半田工科高校(現:半田工)
電子機械を分離し、ロボット工学(改編)と機械に。
建築を建築デザイン、土木を都市工学に科名変更
ロボ、機械、電気で括り募集。

■豊田工科高校(現:豊田工)
電子機械をあらため、IT工学に。
電子工学にコースを新設し、電子工学(生活コース)をつくる。

■岡崎工科高校(現:岡崎工)
化学工業をあらため環境科学(生活コース)を新設。
情報技術を情報デザイン、土木を都市工学に科名変更。
機械、機械デザイン、電気で括り募集。情報デザイン、環境科学で括り募集。
都市工学は単科募集。

■碧南工科高校(現:碧南工)
環境工学をあらため、環境科学(生活コース)を新設。
建築を建築デザインに科名変更。
機械、電子で括り募集。建築、環境で括り募集。

■刈谷工科高校(現:刈谷工)
電気を分離し、IT工学(新設)と電気(生活コース)へ。

■豊橋工科高校(現:豊橋工)
建築を建築デザイン、土木を都市工学に科名変更

■豊川工科高校(現:豊川工)
電子機械を改編し、ロボット工学へ。
情報システムにコースを新設し、情報デザイン(生活コース)を新設。

 

Ⅲ 現状で考えられる問題点は
(1)「Society5.0」「超スマート社会」「技術革新」などのワードをちりばめています。産業界の「要請」に応える「即戦力となる人材」の育成に傾きすぎていないでしょうか。高等学校教育は、「教育基本法」「学校教育法」にあるように「人格の完成」「幅広い知識と教養」「豊かな人間性」などを育む基礎的教育こそ求められるべきです。このことは、県も否定できないはずです。
2016年度に愛知総合工科高等学校が開校し、公設民営の専攻科も設置されました。まもなく4年が経過します。総合工科でめざしている新しい「工業高校像」を他校に広げる方向と見受けられます。
(2)2021年4月実施はあまりに拙速です。現在、各校では2022年実施の新学習指導要領に基づく新カリキュラム編成作業がすすめられています。該当校は、これを事実上1年前倒しして2021年入学生のカリキュラムも同時に考えていかなければなりません。中学生への案内などを考えれば、あと半年しかありません。
(3)改編と新設で獲得できる予算に違いがあってはなりません。ロボット工学は、「(電子機械科からの)改編」(瀬戸、春日井、起、佐織、半田、豊川)とされ、IT工学は、「新設」(名南、一宮、豊田、刈谷)、環境科学も、「新設」(小牧、起、岡崎、碧南)です。いずれにしても、かなりの規模の新規の予算付けが必要となるでしょう。現場の要求を早急にまとめ、それに基づいた予算を付けさせることが必要です。
(4)1学科を2学科に改編・新設する場合(電気→ITと電気、電子機械→ロボットと機械)は、喫緊の様々な課題が持ち上がるでしょう。まず現行スタッフで2学科両方のカリキュラムや実習、部屋割り、予算要望などを決めなければなりません。カリキュラム編成では、指導要領の工業科目が新学科に対応していないのなら、特徴ある学校設定科目を設けたり外部講師の選定も必要になるかもしれません。
(5)新たなコースとして、「生活コース」を8校に新設としたことが目新しいです。発表によると、「モノづくり企業で活躍している女性から直接指導を受けるととともに、全学年を通して生活に関連する科目を履修し、将来『モノづくり女子』として活躍できる人材、また男女共同参画の視点から、モノづくりをしながら、仕事と生活を両立できる人材を育成」とあります。男子ももちろん履修可能とのことですが、従来入学が少ない女子生徒獲得のための目玉ということでしょうか。県は、企業の女性を外部講師として招いたり、インターンシップの推進を想定しているようです。環境科学科での設定が多いですが、電子工学や情報デザインでも設置されます。生徒があまり知らない、女性が活躍する製造業の現場を知る機会になるでしょうか。
(6) 全学科一括募集や複数の学科での括り募集が大きく増えています。入学後のミスマッチの防止や、1年生で基礎的な学習にじっくりととりくめるメリットがあると考えられます。他方で、1年生後半の振り分けの指導について負担が増大します。
(7)瀬戸窯業高校の「総合ビジネス科」の募集停止の件は、大きな問題です。今年7月にも夜間定時制高校2校(旭丘、瑞陵)の募集停止が突然発表されました。今回も突然の発表でした。瀬戸地域の経済界からも心配が広がるのではないでしょうか。
愛知の商業教育が今後どうなっていくのか、明確なプランは県から示されてはいません。多くの商業科教員が不安や疑問をもっています。教員採用試験の「商業」が0になったことも不安に拍車をかけています。
代替措置として、「瀬戸北総合高校に商業系列を設置」と打ち出されました。現場では不安の声が広がっています。現行の7系列(人文、自然、福祉、生活科学、情報創造、健康科学、国際教養)は維持できるのでしょうか。現在の瀬戸北総合高校には商業科の教員はいません。こうした中で、カリキュラム原案を作れるのでしょうか。

Ⅳ まとめ
今回の提案は「魅力ある工業高校」へという打ち出しなのでしょうか。平成31年度入試での該当校(学科)の倍率をみると、低い場合、1.08、1.08、1.23、1.28、1.35、・・・という値が散見されます。県が「工業高校の生き残り」をかけて工科高校への改編を仕掛けたというように見えます。
ここまで大規模な「工科高等学校」への校名変更は全国初とのことですが、名前の掛け替えだけではなく、新たな学校づくりを探るきっかけとしたいものです。ただし、職場のとりくみなくしては、トップダウンによる「教育目標」おしつけになりかねません。大学進学数や、大企業への就職実績を今以上に競い合わされる契機になるおそれも十分にあります。
今年度は、2016年2月に発表された「県立高等学校教育推進実施計画(第1期)」の最終年度です。今回の発表は、これに合わせたとも考えられます。そこでも「キャリア教育」「ものづくり愛知」「スペシャリスト」といった言葉が多用されており、この方向は2020年2月にも出されるであろう「第2期計画」にも引き継がれることでしょう。
長時間過密労働の解消が叫ばれている今、一部の担当者に新設業務の負担が集中することがあってはなりません。職場の同僚性や風通しが今以上に大切になります。県への予算要求は引き続きすすめていきます。
工業高校はもちろんのこと、すべての職場で「県立高等学校教育推進実施計画(第1期」の検証と分析が改めて必要になっています。